【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 ストレーム国の王都、パンクハーストの街に入ると、魔導車はこの国を警備する騎士達によって誘導された。魔導車は速度が出るため、街中で走らせるには危険なのだ。国と国、領地と領地間の移動に重宝されるそれだが、人の多い街で走らせることは禁止されている。
 誘導された駐車場に魔導車を止めたフラン。

「ねえ、あなた。ここからは近いの?」

「そうだね。カリーネが世話になる工房は歩いて十分くらいなんだけどね、荷物があるから荷馬車を頼んでおいたんだ」
 できる男は何かが違うようだ。
 フランは駐車場の受付にいき、そこにいる騎士に幾言か声をかける。どうやら、手配していた荷馬車がどこにあるのかを確認している様子。受付の騎士も答えに慣れているのだろう。このパンクハーストの街の地図をフランに手渡しながら、説明をしている。フランが陽気に礼を言えば、受付の騎士もにこやかに返す。ここで彼の人当たりの良さというものが役に立っているようだ。

「リネーア、カリーネ。荷物をその荷馬車に運んで。自分の手荷物だけでいいから」
 言いながらフランは一番大きな鞄を手にしていた。それはもちろんカリーネの着替え一式が入っているトランク。

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