梅折りかざし、君を恋ふ 〜後宮の妃は皇子に叶わぬ恋をする〜
梅折りかざし、君を恋ふ 〜後宮の妃は皇子に叶わぬ恋をする〜
第一話
円窓越しに見えるのは、春雨に濡れる緋色の梅。
几案一つさえ残さず伽藍洞になった房の中から、張 琳伽は内院をじっと眺めている。
前の皇帝の後宮妃の一人であった琳伽は、今日この後宮を去る。その後の生き方は、自身で自由に決められるものではない。後宮を出たその足で出家し、尼となるのだ。
後宮から妃嬪が一人残らず去ったあと、この場所は新たに即位した皇帝の後宮として一新される。
親子ほど年の離れた前皇帝に仕えて寵愛を受け、最後は徳妃まで昇り詰めた。
ここ数年は前皇帝の居に近い翠耀殿で過ごしていたが、前皇帝の崩御後はこの梅華殿に戻って来た。ここ梅華殿は、琳伽が後宮入りした十五の時から約六年ほど過ごしていた思い出深い場所である。
「張徳妃さま、お茶をお持ちいたしました」
何もないこの房に、侍女の声がぼんわりと響き渡る。
「ありがとう。今日は雨が降って冷えるわね」
「そうでございますね。せっかく梅の花が綺麗ですのに」
琳伽が後宮を去った後、この梅華殿にも新帝の妃が入ることになるだろう。毎年琳伽を楽しませてくれた内院の梅の花も、次に巡ってくる春の頃には、別の妃に向けてその緋色の花を開くはずだ。
几案一つさえ残さず伽藍洞になった房の中から、張 琳伽は内院をじっと眺めている。
前の皇帝の後宮妃の一人であった琳伽は、今日この後宮を去る。その後の生き方は、自身で自由に決められるものではない。後宮を出たその足で出家し、尼となるのだ。
後宮から妃嬪が一人残らず去ったあと、この場所は新たに即位した皇帝の後宮として一新される。
親子ほど年の離れた前皇帝に仕えて寵愛を受け、最後は徳妃まで昇り詰めた。
ここ数年は前皇帝の居に近い翠耀殿で過ごしていたが、前皇帝の崩御後はこの梅華殿に戻って来た。ここ梅華殿は、琳伽が後宮入りした十五の時から約六年ほど過ごしていた思い出深い場所である。
「張徳妃さま、お茶をお持ちいたしました」
何もないこの房に、侍女の声がぼんわりと響き渡る。
「ありがとう。今日は雨が降って冷えるわね」
「そうでございますね。せっかく梅の花が綺麗ですのに」
琳伽が後宮を去った後、この梅華殿にも新帝の妃が入ることになるだろう。毎年琳伽を楽しませてくれた内院の梅の花も、次に巡ってくる春の頃には、別の妃に向けてその緋色の花を開くはずだ。
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