夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

城田部長のここでの業務最終日に少し新部長のことを聞くことができた。

「部長。部長の後任の方ってどんな人なんですか?」

「あぁ、僕の学生時代の先輩でアメリカでの戦友って人だよ。もともとはうちの社に来てくれてた会計士だったんだけど、僕が引き抜いて向こうで一緒にアメリカ支社を立ち上げてくれたんだよね。彼がいたから頑張れた。頼りになる人だよ」

「会計士の資格をお持ちの方なんですね。恐れ多くて会話もできないかも」

「今は会計士の仕事はしてないよ 。乃愛ちゃんからしたらきっと普通のおじさんだよ。クールな対応をすることもあるけど、女性には基本優しいんじゃないかな。乃愛ちゃんはかわいいから大丈夫、かわいがってくれるよ」

適当なことをいう部長、明日からは副社長だけど、こんな感じで気さくにお話ができる人だといいな…と思っていた。

「大丈夫って、部長の意見じゃないですか」

アハハと笑いながら話をする部長こそ、新人の頃から優しく接してくれた。こんなちょっと拗ねたように話をすることももうできないかもと思う。

他愛もない話ができて、ここ最近のブルーな気持ちが少しはれた気がしていた。

どんな人だろうと思うけれど、部長より年上な訳だし、もしかしたら私と同じくらいの年齢のお子さんとかいる人かな…。

そうだとしたら、きっと部長の言う通り優しく接してくれるかも、という期待を持ち部長のデスク周りを綺麗に拭いていた。
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