夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
「乃愛、ため息多いけどなんか嫌なことでもあったのか?」
「嫌なことではないけど、4月になるとやっぱり気持ちが落ちる…っていう感じ?」
「あぁ、毎年そうだったな…。それなら気がつくと治ってるパターンだな。気分転換したいならいつでも言えよ。美味しいご飯でも、買い物でも付き合ってやるよ」
「うん。ありがとう…」
「まぁ、俺とお前の仲だしな」
陽くんの口の端が上がり、その爽やかな笑顔で気分が少し上がる。
中学生くらいから陽くんは女の子にモテていた。
今も一緒にいると周りの女性から視線を感じる。
私は幼馴染であって彼女ではないのに、無駄に睨まれることがあるので困る。
そんな陽くんは前に痴漢にあったことを話したからだと思うけど、ラッシュの電車内ではさりげなく周りから守ってくれる。
優しい兄という存在でいつまでも妹扱いなところがある。
長く一緒にいたから会話も気を遣わず、無言の時間も苦にならず、側にいてくれるだけでいい。