夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

始業時刻になると部内にあるモニターに役員たちが映し出され、社長から役員紹介と続いて新体制の人事が発表された。

挨拶が終わりモニターが消され、皆が各自の席へと戻って行く。
いつも通りに業務をしていると前部長である副社長が新しい部長を引き連れ、顔を出した。
いつものように品の良いスーツを身に纏い、軽く手を上げにこやかに入室する。

「やあ、皆さん。いつも仕事を頑張ってくれてありがとうね」

変わらない口調で語り出した。

横には見慣れない男性、副社長と並んでも遜色ないほどの素敵な人。

隣にいる先輩が二人が並んでいるのを見て、少し興奮気味に声を掛けてきた。

「ねえねえ、二人とも背も高いし美形で並ぶと圧巻ね。たぶん、40代よね…でも、素敵な人ね…」

「先輩、副社長はまだ38歳だと思いますよ。先日もうすぐ40ですねって言ったら嫌な顔をされました」

「そうなんだ。でも、どうせ眺めてるだけだから既婚者だしどっちでもいいかな。それより新部長も既婚者かしらね?」

「さぁ?でも今度の部長さんも素敵そうで、副社長に負けてないですね」

興奮ぎみに話してくる先輩とは別の方向からも『ねえねえ、俳優のさ◯◯…さんに似てない?』とか『えー、私はタレントの△…さんの方が似てない?』なんて声まで聞こえてきた。
どちらにしても渋め人の名前だから、結局は格好いい…ということなんだろう。

ヒソヒソと先輩と話していると、新部長が挨拶を始めた。
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