夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

「はじめまして、皆さん。この度、アメリカ支社から赴任してきました、岡田卓人です。日本は15年ぶりになります。しばらくは皆さんに教えていただくことも多いと思いますが、よろしくお願いいたします」

言い終わって部内を見渡している様子の部長が急に動きを止め、目を見開きじっと私を見ていることに気がついた。

…なんで?なんだか驚いてるって感じじゃない?

「ねえ、こっち見てるわ。やだ素敵…既婚者でもいいわ。憧れちゃうわね」

隣の先輩はなにやら嬉しそうに声を上げるが、私はちょっとうるさかったかな?目を付けられるとかは嫌だな、と心配に思う。

続けて新副社長が話し出すと少し離れた場所にいる女性が先輩と同じようなことを言っているのが聞こえた。

「副社長ったら相変わらず爽やかでカッコいいよね。新しい部長も素敵そうだし、またやる気が出てきたわ」

確かに副社長は30代後半とは思えない麗しい見た目。
そして、さらに年上と聞いていた新しい部長も40近いとは思えなかった。

だが、私が気になったのはあの驚いたような顔と視線だった。
すぐに解散となったため、その後特に視線を感じることはなかった。
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