夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

駅に着くといつも乗る電車が来る時間が迫っていた。夢のことなどすっかり忘れていた私は少し急ぎ足になっていた。

「ひゃっ」
と小さく声をあげ、ズズン、という音がする。

あと五段ほどというところで段差を踏み外し、正座したような状態で滑り落ちていた。

「大丈夫ですか?」と声をかけてくれるサラリーマンが手を貸してくれて立ち上がることができた。

電車がホームに来たこともあり、慌ててお礼を言い電車に乗る。

痛い…おまけに周りの注目を浴び恥ずかしくて電車に急いで乗ったのはいいが、ヒリヒリする足を見るのが怖いと思っていた。

職場に着き更衣室に行き怪我を確認するとストッキングが破れて、脛を擦りむいていた。

「あー、痛いはずだ。血が滲んでる…」

ここまでも歩けていたし、骨に異常とかはないと思うが手当てはしたいと考え、自席に鞄を置いて出勤していた先輩に声をかけて医務室に行かせてもらった。

「今日はついてないな…この後は気をつけなきゃ」って、朝も気をつけようと思っていたのに忘れて怪我してしまうとは…。
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