夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
私は二人でいるだけでドキドキしてしまうのに、彼の落ち着いた様子を見ているとやはり卓人さんは大人なんだなと思う。
他の男性とは違う何かを感じてしまう。
もっと一緒にいたい。でも、彼の優しさは子供の頃と変わらない。それが苦しくなっていた。
…はぁ……と小さなため息を一つ溢す。
久しぶりに見た夢は卓人さんと京ちゃんが二人で仲良く笑いながら手を繋ぎ歩いているところだった…。
ふと目が覚めて虚しくなった。
「京ちゃんと卓人さんはお似合いの夫婦だったな。やっぱり、夢でも私が隣を歩くことなんてないんだな…」
あぁ、よくドラマとかで聞く『亡くなった奥さんには敵わない』という感じなのだろうと思った。
「いつまでも京ちゃんが卓人さんの一番大切な人であることは変わらないんだな…」
気がつけばそんなことを呟いていた。
その頃から私が見る夢が変わってきた。
卓人さんの声で『…愛してる』という言葉が夢の中で聞こえてきた。
誰に言った言葉なの?
なんだか悲しくて夢から覚めた私の頬は涙で濡れていた。きっと、夢ではなくこれが現実なのだろう…。
卓人さんの態度を見ていれば分かる。私はいつでもいつまでも彼から見たら子供なのだ。
私と卓人さんではいくつになっても叔父と姪。
恋人になれるなんてことはない…。