夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

田中さんが何を飲もうか悩む私に声をかけてくれる。

「ここは地酒が美味しいんだけど、乃愛ちゃんは日本酒は好き?」

「日本酒はあまり飲んだことないです」

「こいつ酒はダメだよ。ビールも苦いとか言って、一口飲んだら残りを人に飲ませるしな。おまけに少しですぐに真っ赤になる」と、陽くんが口をはさむ。

「陽介。お前さ、俺は乃愛ちゃんに聞いてるんだけど。ほんと…邪魔すんなよ」

陽くんは『邪魔』と言われてムッとする。

「ねぇ、乃愛ちゃん。じゃあ甘い方がいいかな。カシスソーダとかどう?そんなに強くないし、飲みやすいと思うよ」

「少しなら飲んでも平気かな…?」

もし、酔ってしまったらどうしようと思い、陽くんの方を見てしまう。

「少しなら飲めばいいよ。まぁ、酔ったら俺が家まで連れて帰ってやるよ」

「うん。ありがとう、陽くん」と明るい声を出し、それを注文する。

飲み物や食べ物がテーブルに並び、「美味しいね」と言いながら食べ、仕事のことや休日に何をしているかなど会話が続いていくと田中さんが急に私に視線を向けて聞いてきた。
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