夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

「ねぇ、乃愛ちゃんさ…。あのさ、この前も聞いたけど今付き合ってる人はいないって言ってたじゃない?」

「はい。いませんけど」

改まって聞いてくる田中さんの質問に少し酔っぱらっている私は元気に答える。

陽くんは田中さんの横で淡々とお酒を飲んでいる。

「あのさ、本当は二人の時に言いたかったんだけど、もし良かったら俺と付き合ってくれないかな…」

田中さんはテーブルに置いた手の上に顎をのせ、真っ直ぐに私を見つめていた。

「えっ…あっ…えぇっと…」

予想外の台詞が飛び出てきて、慌ててしまう。まさか、陽くんがいるのにこんなこと言う?視線の置き場をなくし、顔が熱くなり手で顔を扇いでいると、さらに慌てたように田中さんが次の言葉を伝えてくれる。

「ごめんね。急に困るよな。答えはすぐでなくていいよ。待ってる」

なんと答えたらいいのか分からず、横にいた陽くんを見る。

「ちょっと俺…」と席を立っていってしまった。すがるものを失くした私は、こんな時になんて返事をしたら良いのか分からずに俯いていると、手を伸ばしてきた田中さんに手を重ねられる。

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