夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
「もしかして、本当は乃愛ちゃんは陽介のことが好きだった?」
「いいえ。特に好きとか、付き合ってるとかないですよ。子供の頃から陽くんはずっと本当の兄のように私の面倒を見てくれてるんです」
陽くんは本当の兄ではないが、私にはとても過保護なところがあり、実の兄のよう。
以前付き合っていた人と別れた時もすぐに家まで来て慰めてくれた。いつも私が落ち込んでいたりすると食事に連れていってくれたりもした。
あれ?もしかして、それって付き合ってることになるの?
「そっか…。まだ俺にもチャンスはあるかな…。答えは急がないけど、ちゃんと返事をもらえるまではアプローチし続けるからね」
よろしく、と重ねた手に力が込められた感じがした。
その日は陽くんと一緒に家まで帰るが、いつものような会話はなかった。
お風呂に入っても、ベッドに入っても田中さんと陽くんのことを考えてしまいなかなか眠りにつけなかったからか、朝寝坊してしまい今朝見ただろう夢のことは覚えていなかった。
「なんだか夢を覚えていないって久しぶり…。それとも夢を見ないくらい深く寝ちゃったのかな…」と呟いた。