夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

近づきたいのに

アメリカ支社で日本に戻る直前まで関わっていた件を確認する目的で出張した。当時その仕事を引き継ぎ担当してくれたのが滝川怜子だった。彼女は長い黒髪をサラッとなびかせながらハイヒールで颯爽と歩く姿が美しいと言われ、男性から人気があった。

その彼女が俺の帰国に合わせて日本にやって来た。その後会社にも毎日顔を出しては俺に絡んできた。

彼女は城田の元見合い相手で、城田を追ってアメリカに来たのだが、城田には今の奥さま、当時は恋人だったが心に決めた女性がいて相手にもしていなかった。

あの頃、城田の秘書として共に行動していた俺は特に関心を持たれていた訳ではなかったが、城田が婚約した時からターゲットが俺に変わってしまった…らしい。

正直、俺は京子が忘れられていなかったので、当然相手にはしていなかった。
もちろん今回の出張中でも乃愛に惹かれている今の自分は彼女の誘いには乗らなかった。

だからなのか…？日本まで追いかけて来るとは。正直、面倒なことになったと頭を抱えていた。