夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
「ちょっと彼女、一体何者なのかしら?やたらとうちの部に来ては岡田部長にベタベタしてるのよね」
不満を隠さずにそんなことをいう先輩。
「確かに…何しに来ているんでしょうね?」
「本当…憧れの岡田部長があんな女と付き合ってるって信じられない。美人かも知れないけど、部外者のくせに我が物顔して、『これコピー20部ですって。よろしくね』とかこの前言われたのよ」
「…まぁ、アメリカ支社の方ですし、こちらでもお仕事されてるからかもしれないですよ」
不機嫌な先輩を宥めようとすると、背中にゾクッとするような視線を感じた。
思わずキョロキョロっと周りを見回すと、睨み付けるような顔をした滝川さんと目が合った。
怖くなり目を反らしてしまうと、彼女は岡田部長の部屋にまた入っていった。
「どうした?乃愛ちゃん?」と先輩に声を掛けられて、慌ててしまう。
「はっはい。なんでしょうか?」
「何ってこともないんだけど、なんだか顔変だよ。疲れてる?」
「だ、大丈夫です。仕事、仕事しましょう」
なんであんな目で見られていたのか気になるけど、今は私も仕事をしなきゃ、とパソコンの画面に目を向けた。