夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

駅近くの居酒屋に入り、陽くんはいつものようにビールとカシスソーダを注文する。

「陽くん、あのね、前に三人で飲んだときのことなんだけど…」

「三人って?」

「田中さんとのこと。どうしたらいいのか分からなくて…それで…」

「それでって、そんなの乃愛の気持ちを伝えればいいだろう。それとも俺が付き合えばって言ったら付き合うの?」

「…う……」

「じゃあ、何に悩んでるの?乃愛は悠貴に断るための理由を相談したくて俺を呼んだんだろう?」

「違っ…」

「違わないだろ。だって、悠貴のことが好きだっていうなら、俺に相談なんかしないだろう」

次の言葉が見つからず俯いていると陽くんの手が頬に添えられ、続けて言われる。

「俺だってお前のことずっと見てきた…。だから、お前が誰を見ているかくらい知ってる」


「えっ?」

「無自覚か…。いいか、俺は兄じゃない。俺はずっと前からお前のこと妹なんて思ってない」

そう言ってビールを飲み干し、おかわりを注文する。

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