夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
陽くんがそんなことを言うなんて思っていなかった私は目を瞬かせ、陽くんに視線を移す。
陽くんは私の頬に手を伸ばしてきて
「乃愛…。あいつより俺の方がずっとお前を幸せにできると思ってる。俺じゃダメか?」
「あいつ…って…」
陽くんが言っている『あいつ』が誰のことを言っているのか確認してくて聞き返してしまう。
「…岡田部長…」
「ぶっ、部長って…な…なんで卓人さんなの?」
「見てれば分かる。ずっと見てたって言っただろう。悪いけど、悠貴は眼中にない」
自分の気持ちを言い当てられ、私はもう何も言えなくなってしまった。
気まずい空気のまま家まで歩くが、家の方向は同じなので当然帰り道も一緒に歩く。
少し離れて歩いていたが、私の家の前まで来たところで陽くんが振り返る。
「乃愛…。明日悠貴と食事に行くんだろう?それに俺も一緒に行く。初めから俺らのこと疑っていたし、俺と付き合うと言えば、悠貴は諦めると思う」
「でも、それって…。私…」
はっきりと言葉を返さない私を陽くんが抱きしめてきた。