夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
滝川さんは席に着くなり話し出す。
「とりあえずあなたも座りなさいよ。ワインでいい?」
席に着き「…はい」と応えるとオーダーをする。緊張の糸が張りつめたような感じで、私は手に汗を握り心臓がバクバクしていた。
「私がどんなに誘惑しても靡かなかった卓人がなんであなたみたいな子供相手に本気になっちゃったのかしら?」
「本気?…それ…間違ってます。卓人さんは…私の叔母が忘れられないだけです。私の顔が叔母と似ているから、それに、今はあなたと付き合っているんじゃないんですか?」
「ふん。今、私と付き合ってるならあなたをここまで連れては来ないわよ」
「でも、付き合ってるからわざわざアメリカから来たんですよね?」
美麗な笑みを浮かべた怜子さんが言う。
「……まずはその誤解から解きましょうか」
「誤解って?」
「私は卓人と付き合ってもいないし、あなたと卓人が幸せになってくれたらいいな、って思っているのよ」
「…それって…」
「あぁもう、そんなに緊張しなくていいから。ねぇ、これからは私のこと怜子って呼んで、あなたのことは乃愛でいいかしら?」
「…はい」