夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

「仕事だと迅速に行動できるくせに、自分のことになるとまったくダメね」

私は滝川さんのこと卓人さんの恋人で、私が姪という立場でプライベートで会うことを嫌がっているから呼び出されたと思っていたのだけど、どうやら全然違う雰囲気を感じ拍子抜けしていた。

「確かに卓人がアメリカにいた時は何度もアプローチしてたけどきれいさっぱり振られてるから。それに今付き合っている人と婚約したの。だから自分が幸せになれたから、卓人にも幸せになってもらおうって思ってるだけだから」

「滝川さんにそんな風に思ってもらえて卓人さんは幸せだと思います。こんなに素敵な友人がいるなんて嬉しいだろうな…」

「私が考えているだけじゃダメだから、あなたを連れ出したのよ。だから、もう緊張していないで、ゆっくりディナーを楽しみましょう。まずはあなたが諦めようとしてるところからなんとかしなきゃだわ」

滝川さんは食事中にアメリカにいた頃の卓人さんの話をたくさんしてくれた。

私の知らない卓人さんが哀しみを乗り越え、前を向いて進むために仕事に力を注いでいたことで、今の彼が輝いているのだと分かった。

そろそろデザートがサーブされる頃になると部屋の外が騒がしくなり、扉が開くと飛び込んできたのは息を切らした卓人さんだった。
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