夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
「乃愛」と大きな声で呼ばれ、私の側まで来た卓人さんに手を取られ立ち上がった瞬間に抱き締められる。そして、怜子さんに向かって声を荒げる。
「怜子。何のつもりだ?乃愛を誘拐ってなんだよ」
「あーあ。もう少しでデザートまで食べ終えるところだったのに。卓人、焦りすぎよ」
卓人さんの後に肩を揺らし笑いながら外国人男性が部屋に入ってきた。
「怜子。この辺にしておきなさい。卓人ももう自分の気持ちはもう分かっただろう」クスクス笑いながら、怜子さんの横に立つ。
「乃愛、この人が私の婚約者のマイクよ。どう?安心した?」
「素敵な人ですね」と怜子さんと笑顔で話していると卓人さんの焦っていた顔が困惑したものになる。
「えっ、お前たち婚約って…いつから二人は付き合ってたんだよ?それになんで乃愛と仲良く食事なんかしてるんだよ」
まったく状況が分からないといった卓人さんの慌てる様子に顔が綻ぶ。
「ふふん、いいでしょう。ここのディナー美味しかったわよねぇ、乃愛」
卓人さんを挑発するように怜子さんは笑顔で近づいて私の頭を撫でてくる。