夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
見惚れていた私に、たーくんは私にも王子様スマイルを向けてくれた。
『乃愛ちゃん、とても可愛いね。今日はフラワーガールの役を引き受けてくれてありがとう』
最高の笑顔に『うん!』と大きく返事をして、大きな手で頭を撫でられ、ご機嫌な私。
花びらの入ったかごを手にバージンロードを歩き、京ちゃんがおじいちゃんと腕を組み私の後を祭壇まで歩いていく。
そして、式が始まろうという時……私はアラームの音で目が覚めた。
「……なんだ…夢。京ちゃんの夢、久しぶりに見たな…」
昨夜、仕事から帰ってきたところで母に来月の15日に京ちゃんの17回忌だって言われたから。
きっとこれは昨夜寝る前に京ちゃんのことを考えていたから見た夢で、私の記憶が見せたもので現実になることがない夢。
そう…私の憧れであった京ちゃんはあの結婚式の2年後に交通事故で帰らぬ人となった。
当時小学3年生だった私でも京ちゃんのお葬式のことは悲しい記憶として残っている。