夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

幼少期に憧れていたたーくんこと…確か…たくとさんとはもうずっと会ってはいなかった。

後で聞いた話だと、その後仕事の関係でアメリカに行ったのだそう…。

「もう16年も経ったからどこかで偶然会ったとしても、顔も分からないよね…」

美人で憧れだった京ちゃんととてもお似合いだったことは覚えていても、正直、私はたくとさんの顔ははっきりとは覚えていなかった。

「はぁ…毎年、この時期は気持ちが沈むな…」

もう一度ベッドに横になるとあの時フラワーガールのお礼に二人からもらった猫のぬいぐるみが今もベッドサイドで可愛らしい顔で私を見つめてくれる。

「ニャーニャ、いつもありがとう」
と年甲斐もなくぬいぐるみを抱きしめた。

子供の頃はよく一緒に寝てくれたし、抱きしめると心が落ち着くし、癒してくれて、今でも大切なパートナーとなっている。

ニャーニャに「少し癒されたよ。ありがとう」と頬を寄せた後、定位置のベッドサイドに置いた。

時計を見るとゆっくりベッドにいられる時間ではなくなっていて慌てて起きた。
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