鷹臣くんは盗みたい
美月、本当にごめん。
後で返すから。
オマエの机の中に、こっそり忍ばせておくから。
今だけ、ペンのことは諦めて。
「美月のことだからさ
友達に貸したとかじゃないの?」
冷たい言葉を放ちながら、俺は自分の席に座った。
絶対に盗んだとバレたくない。
美月のペンを、机のさらに奥へグイッと押し込む。
俺の隣は、美月の席。
美月はしゃがみこむと、机の中を探し始めた。
机の中の教科書を全部出して
「入ってないよぉ」と涙目。
カバンの中身を、豪快に机の上にぶちまけ
「カバンの中にもないって……
本当にどこに行っちゃったのぉぉぉ?」
おでこに両手を当て、悲しんでいる。