寡黙なトキくんの甘い溺愛
「!?」
ボソッと呟く独り言に反応してくれたのは、俺の隣に立つ倉掛さんだ。
今は新オリの会場にいくためのバスを待つ時間。皆は運動場で好きに動き回っている。
倉掛さんは相条さんと遅れてここにやってきたようで、少しだけ息切れしていた。相条さんは「水飲んでくる」と離れ、俺と倉掛さんの二人きりになった。
「おはよう、トキくん!昨日はありがとう」
そう言う彼女の頭には、昨日俺が渡した髪ゴムがあって……
それを強調するかのように、高い位置でポニーテールがされていた。
「それ……」
「あ、これね!へへ、私のお気に入りなんだ~って言ったら、しずかちゃんが髪を括ってくれたの」
「……よく、似合ってる」
「あ、ありがとう!
あのね、トキくん、」
一生懸命につま先立ちをして俺に何かを話そうとする倉掛さん。俺は上体をゆるく曲げて、彼女の口元まで近寄る。
すると――
「私、この髪ゴム大好き。トキくん、本当にありがとう」
「っ!」
耳元で、大好きって……。
もう分かってやってるんじゃないかと思うくらいに、倉掛さんの天然な言動はスゴイ。