寡黙なトキくんの甘い溺愛
「じゃあ、俺も負けない」
「え」
さっき倉掛さんから渡されたハチマキを、頭にシュルッと巻く。
俺のハチマキは倉掛さんが作ってくれた。あがつまとき、と丁寧に書かれている。
キュッと、強く結ぶ。
勝って兜の緒を締めよ――なんて言葉があるけど、俺は勝ってもいないし、相手を負かしてもいない。
同じ土俵にいる者同士の、真剣勝負だ。
「倉掛さんは、渡さないから」
「わぁ、トキくんって意外にアツいんだねぇ。
そんなことされたら……俺も燃えちゃうよ?」
「燃えて灰になれば?」
「い、言うねぇ……でもヒドイ!」
二人の間に、メラメラと炎がたち、火花が飛び散っているような――そんな雰囲気。
俺たちの事情を知らない外野では、
「イケメンのにらみ合いよ」
「絵になるわ~」
「家宝ねぇ絵画にしたい」
と、ドッチボールそっちのけで、鑑賞会が始まっていたのだった。