寡黙なトキくんの甘い溺愛
妙な胸騒ぎがした――とでも言えば恰好がつくんだろうけど、俺は本当にたまたま、ジュースを買いに部屋を出ただけだった。
いつもと違う場所で、いつもと違う静けさ。
落ち着く。騒がしい大橋と一日中一緒だと、さすがに疲れた。
「(晩御飯まで俺のおかずを取ろうとするし……倉掛さんのことも。アイツ、横取りが好きなのか?)」
と言っても、倉掛さんが別に俺の物ってわけではない。
むしろ、すごい勢いで友達になりつつある。
彼氏彼女じゃなく、友達。
「長期戦、か」
そう呟いた時だった。
自販機の近くで話声が聞こえる。
男の声?何を言ってるんだ?
――「深く考えなくていいから!その、友達から、仲良くなりたいなって……!!」
――「だから、どう?倉掛さんっ」
「!?」