寡黙なトキくんの甘い溺愛
「(また、何かを頑張ろうとしているのか……)」
小さな彼女の、優しい心。
健気さ、そして普段は見せない可愛さ。
それに気づいた時、どうしたって皆が惹かれてしまう。
俺も――その一人だ。
目の前の男も、きっとそうなんだろう。
「(相条さんが言っていたのは、こういう事だったのか)」
『トキくんはそうでも、他の男子は違うからね?砂那の可愛さに気づいた男子が、この二日、砂那に押し寄せるかもよ?』
俺が前から知っていた倉掛さんの魅力に、皆気づき始めている。
そして倉掛さんも、その中の誰かと付き合ったり……するんだろうか。
俺じゃない、誰かと……。
「(行かないで)」
声を大にして言えない事が、こんなにももどかしいのかと思い知らされる。
倉掛さん……早く、俺の物にならないかな――
なんて思うと狂気じみてる気もするけど……。
でも倉掛さんが笑うその時に、隣にいるのは……俺がいい。
俺だけで、いい。