寡黙なトキくんの甘い溺愛

「あ、あのね、林くん……っ」

「うん!」



俺が物思いに耽ている間に、倉掛さんは覚悟が決まったのか口を開く。



「私、林くんとは……帰れない。ごめんなさい」

「え、いや……えっと、他に付き合っている人がいるの?」

「ううん……いないよ」



ホッと安堵する俺。

その時――

俺の背中で俺のシャツを握る倉掛さんの手が、ギュッと力を込めた。



「でも、他に好きな人がいるのっ。だから、林くんとは……」

「!?」

「そ、そうなんだ……わ、分かった」



素直に引き下がる林だけど……え?倉掛さん?

え?いま、なんて?



『他に好きな人がいるのっ』



頭の中で、倉掛さんの言葉がグルグル回る。

倉掛さん、いつの間に……っていうか、誰なんだ?

俺の知ってるやつ?それとも……大橋?

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