寡黙なトキくんの甘い溺愛

トボトボと帰ろうとする林を、倉掛さんが呼び止める。



「あの、林くんっ」

「え?」

「その……誘ってくれて、ありがとう」



ペコリとお辞儀をする倉掛さん。林は眉を下げて笑って「やっぱり、いいな」と呟いた。

俺だけが聞こえてしまい、複雑な気分になる。



「友達なら、なってくれる?」

「も、もちろんだよっ」

「じゃあ、またね。倉掛さん」

「うん。またね、林くん」



二人、円満に手を振って別れる。

でも、心穏やかじゃないのが俺だ。


廊下で二人きり、知らない男に腕を掴まれてるし、告白まがいのことされてるし、挙句の果てには「好きな人がいる」って爆弾発言してるし……。



「(ヤバい……ちょっと、いや、かなり……凹む)」



ズルズル……とその場に座り込む。

倉掛さんはビックリしたらしく「トキくん!?」と背中をさすってくれた。

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