寡黙なトキくんの甘い溺愛
俺が去った後の廊下では、最後に言った俺の声が周りの人に筒抜けだったらしく、
「聞いたー!?」
「吾妻くん好きな人いるんだってー!」
「ショック〜!」
女子の間で、そんな騒動が起きていた。
その賑やかさに、大橋の眉間にシワが寄っていることも気づかず、教室に帰った俺が一番にした事は、倉掛さんを探すことだった。
「(あ、いた)」
倉掛さんは友達と話をしていた。確か……相条さん、だっけ。
「新人オリエンテーション楽しみだね」
「本当〜。ね、砂那。パジャマ買いに行こーよー!可愛いの見せ合いっこしよ〜」
「わー、するするっ!」
倉掛さんが嬉しそうに笑っている。
だけど、相条さんの次の言葉で、途端に笑顔が消えてしまった。