寡黙なトキくんの甘い溺愛
『倉掛さんに好きになってもらったら喜ぶよ。
だって俺……倉掛さんのこと、好きだもん』
大橋くんにそんなことを言われてから、数日が経った。
今日は部活がないと言うしずかちゃんと、放課後、残って出し物の準備中。
「は?」
眉間にシワを寄せて不快感を露わにするのは、私の友達――絶世の美女のしずかちゃん。
大橋くんに言われたことを包み隠さず話していると、すごい形相になった。あぁ、美人が台無し……。
「なにそれ大橋、サイテー。ふざけんな、やっぱチャラいね」
「しずかちゃん、落ち着いて……。大丈夫、私もウソだって分かってるから」
「だとしてもよ!?何でもない子にそんな事をいう事自体、万死に値する」
「(古風だな、しずかちゃん)」
絵の具の筆を片手に持つ私たちは、もう片方の手に各々筆で塗りたくっている。
しずかちゃんは紫。私は赤。