聖女といえど六度の死亡エンドはうんざり。だから七回目は生き残った上で人生も恋も謳歌する予定です。追伸 暗殺者を憑依させましたので関係者はそのつもりでいて下さい
素晴らしきかな朝食
昨夜のサンドイッチも美味しかったけど、朝食も最高である。
とくに焼き立てのふわっふわのパンは、前世といまの人生の中でも食べたことがないほど美味しい。それだけじゃない。
庭の東屋のつくり付けのテーブル上に、サラダ、オムレツ、チーズ、カリカリベーコン、フルーツなどが所狭しと並んでいる。
ミルクはフレッシュだし、ハーブティーは気分を落ち着かせてくれる。
完璧すぎるわ。
毒や薬草の類の混入を警戒することは怠りはしないけれど、この分では食い気が警戒心を凌駕してしまいそうだわ。
こんな素晴らしい食事がずっと続くのなら、監禁されてもいいかも。
なーんてバカなことをかんがえてしまった。
もっともその場合、心身ともに追い詰められる前に太りすぎで絶望することになるはずね。
侯爵との会話もそこそこ弾んだ。一応、淑女のふりをしているので、彼が自分自身のことや領地のことを話しているのをきいているだけにとどめた。
朝食中には、わたしが追放されたこととか婚約を破棄されたこと、これからどうするつもりなのかなどという話はいっさい出てこなかった。
あらためてするつもりなのかしら?
渋い美形には、つねにやわらかい笑みが浮かんでいる。
いまはサラダに入っている野菜や、パンに使われている小麦を自分が育てているということ。それから、卵料理の卵も飼っている鳥が産んだのをとってきたのだということ。さらには、ミルクも搾りたてなのだということを話している。
まだある。チーズなどの乳製品は加工しているし、ベーコンなどの肉も自給自足だというから驚きである。
フレッシュで健康によさそうよね。
ほぼ自給自足らしい。あるいは、領土内の産物だとか。フルーツや野菜など、この地域では採れないものは商人から買っているらしい。肉も同様である。この地域には生息していない動物の肉は、買っているのだとか。
侯爵はそういうことを誇るでもなく、話題づくりとして語っている。
侯爵。あなた、ほんとうにアヤを、じゃないわね。わたしを監禁をして殺してしまうの?
そんなジメジメいじいじしているような正確には思えないんだけど。
マリオのときと同様に、筋書きがかわってしまっているのかしら。
訝しいのを表情に出さず、彼の渋い美形をテーブル越しにじっと見つめている。
「また後程、マリオも交えて話をしよう。いまから、畑や家畜の仕事があるのでね」
「それでしたら、兄の様子をみてからお手伝いをさせて下さい」
「いや、いいよ。きみもいろいろあっただろうし、のんびりするといい」
彼はそう言いながら皿を集め、片付けをはじめた。
どうやら彼は、言葉どおりに畑や家畜の面倒をみる為に城から出て行ったみたい。
マリオの部屋へ行く前に、探りを入れてみることにした。
彼がアヤを招いたほんとうの理由を知りたいからである。
手っ取り早く、書斎をのぞいてみた。
前世のスキルが役に立つ。
確認すべきところはわかっている。だから、段取りよくそういう箇所をチェックしてまわった。
まぁ小説のように、そう簡単にこれぞ動かぬ証拠、みたいなものは見つからないわよね。
自分でもそう思っている。そう思いながら、あれこれチェックしてまわった。
そもそも、そういう何かがあることじたい不確定なのである。
書斎に入ってからどれほど経ったかしら?
それを見つけたのは、本棚の一番上の棚だった。
書斎の壁一面を占領しているその本棚には、本がぎっしり入っている。ジャンルも様々で、小説や歴史書、政や経済、違う大陸にある国の研究書や文化、はては料理書まである。
前世でも本を読むのは大好きだった。当然、アヤもである。
彼女とわたしの唯一の共通点。それが、読書が趣味であることなのだ。
それはともかく、その本棚の一番上の真ん中に、その本はあった。背表紙の文字は、どこかの国の言語で記されている。パッと見たかぎりでは、どんなジャンルの本なのかは判別が出来ない。
その本に違和感を覚えたのは、ほんのわずか左右の本より手前に飛びだしていたからである。
長身の侯爵だからこそ、背伸びすればかろうじて届く高さである。だけど、本を奥まで入れることが出来なかったのか、奥まで入っていないことに気がつかなかったのに違いない。
わたしの場合は、背伸びしても到底届かない。だから、もう目標を定めてジャンプしてその本をつかんでとった。
開けてみると、その本は一頁もない。外側を本に見立ているダミーであることが知れた。
くりぬかれている空間には、ボロボロの手紙とリングが一つ入っている。
リングは、婚約指輪のように見える。しかも、男物のようである。
手紙を開けてみた。
とくに焼き立てのふわっふわのパンは、前世といまの人生の中でも食べたことがないほど美味しい。それだけじゃない。
庭の東屋のつくり付けのテーブル上に、サラダ、オムレツ、チーズ、カリカリベーコン、フルーツなどが所狭しと並んでいる。
ミルクはフレッシュだし、ハーブティーは気分を落ち着かせてくれる。
完璧すぎるわ。
毒や薬草の類の混入を警戒することは怠りはしないけれど、この分では食い気が警戒心を凌駕してしまいそうだわ。
こんな素晴らしい食事がずっと続くのなら、監禁されてもいいかも。
なーんてバカなことをかんがえてしまった。
もっともその場合、心身ともに追い詰められる前に太りすぎで絶望することになるはずね。
侯爵との会話もそこそこ弾んだ。一応、淑女のふりをしているので、彼が自分自身のことや領地のことを話しているのをきいているだけにとどめた。
朝食中には、わたしが追放されたこととか婚約を破棄されたこと、これからどうするつもりなのかなどという話はいっさい出てこなかった。
あらためてするつもりなのかしら?
渋い美形には、つねにやわらかい笑みが浮かんでいる。
いまはサラダに入っている野菜や、パンに使われている小麦を自分が育てているということ。それから、卵料理の卵も飼っている鳥が産んだのをとってきたのだということ。さらには、ミルクも搾りたてなのだということを話している。
まだある。チーズなどの乳製品は加工しているし、ベーコンなどの肉も自給自足だというから驚きである。
フレッシュで健康によさそうよね。
ほぼ自給自足らしい。あるいは、領土内の産物だとか。フルーツや野菜など、この地域では採れないものは商人から買っているらしい。肉も同様である。この地域には生息していない動物の肉は、買っているのだとか。
侯爵はそういうことを誇るでもなく、話題づくりとして語っている。
侯爵。あなた、ほんとうにアヤを、じゃないわね。わたしを監禁をして殺してしまうの?
そんなジメジメいじいじしているような正確には思えないんだけど。
マリオのときと同様に、筋書きがかわってしまっているのかしら。
訝しいのを表情に出さず、彼の渋い美形をテーブル越しにじっと見つめている。
「また後程、マリオも交えて話をしよう。いまから、畑や家畜の仕事があるのでね」
「それでしたら、兄の様子をみてからお手伝いをさせて下さい」
「いや、いいよ。きみもいろいろあっただろうし、のんびりするといい」
彼はそう言いながら皿を集め、片付けをはじめた。
どうやら彼は、言葉どおりに畑や家畜の面倒をみる為に城から出て行ったみたい。
マリオの部屋へ行く前に、探りを入れてみることにした。
彼がアヤを招いたほんとうの理由を知りたいからである。
手っ取り早く、書斎をのぞいてみた。
前世のスキルが役に立つ。
確認すべきところはわかっている。だから、段取りよくそういう箇所をチェックしてまわった。
まぁ小説のように、そう簡単にこれぞ動かぬ証拠、みたいなものは見つからないわよね。
自分でもそう思っている。そう思いながら、あれこれチェックしてまわった。
そもそも、そういう何かがあることじたい不確定なのである。
書斎に入ってからどれほど経ったかしら?
それを見つけたのは、本棚の一番上の棚だった。
書斎の壁一面を占領しているその本棚には、本がぎっしり入っている。ジャンルも様々で、小説や歴史書、政や経済、違う大陸にある国の研究書や文化、はては料理書まである。
前世でも本を読むのは大好きだった。当然、アヤもである。
彼女とわたしの唯一の共通点。それが、読書が趣味であることなのだ。
それはともかく、その本棚の一番上の真ん中に、その本はあった。背表紙の文字は、どこかの国の言語で記されている。パッと見たかぎりでは、どんなジャンルの本なのかは判別が出来ない。
その本に違和感を覚えたのは、ほんのわずか左右の本より手前に飛びだしていたからである。
長身の侯爵だからこそ、背伸びすればかろうじて届く高さである。だけど、本を奥まで入れることが出来なかったのか、奥まで入っていないことに気がつかなかったのに違いない。
わたしの場合は、背伸びしても到底届かない。だから、もう目標を定めてジャンプしてその本をつかんでとった。
開けてみると、その本は一頁もない。外側を本に見立ているダミーであることが知れた。
くりぬかれている空間には、ボロボロの手紙とリングが一つ入っている。
リングは、婚約指輪のように見える。しかも、男物のようである。
手紙を開けてみた。