聖女といえど六度の死亡エンドはうんざり。だから七回目は生き残った上で人生も恋も謳歌する予定です。追伸 暗殺者を憑依させましたので関係者はそのつもりでいて下さい
暗殺者たちを追い払う
「湖の畔に、馬車と騎馬が二頭いる。おそらく、それが連中のターゲットだろう」
「さっきの連中は、あなたほどじゃないけど暗殺を生業にしているのは確かよね。そんな暗殺者四名が襲おうとしているなんて、狙われているのは何者かしらね?」
「おいおい。つぎはおれを持ち上げるのかい?ってか、きみはほんとうに不思議な女性だよな。連中を暗殺者と見破るなんて。そういう感覚も、聖女の力なのかい?」
彼は、聖女にそんな力などないとわかっていて尋ねてきた。
「聖女の力じゃないわよ。だけど、なんとなくわかるの。ほら、女の直感というのかしら?」
「恐れ入ったな。まぁそこはいいとして、どうする?」
「どんな人が狙われているのか知りたくない?」
「わかった、わかったよ。きみの好奇心にのろうじゃないか。行ってみよう」
彼はそんなことを言いながら馬たちを連れに行き、暗殺者たちのあとを追った。
アヤとわたし、それからマリオがあらたな人生をスタートするきっかけに出会っただなんて、まさかこのときには思いもよらなかった。
暗殺者たちが襲っているのは、一台の二頭立ての馬車である。二名の乗馬服姿の従者が騎馬で従っている。
一見したら従者に見えるその二名は、おそらく騎士にちがいない。
襲撃者たちに大剣で立ち向かっている。
暗殺者たちはさすがである。まず馭者を襲った。これで彼らのターゲットであろう人物は、すぐには逃げられなくなったわけである。
馭者だけでなく、騎士っぽい二人の内の一人も傷を負っている様である。
わたしたちが身を潜めている林の中の茂みからでも、彼の左肩が真っ赤に染まっていることがわかる。
「これは、想定内の展開だな」
マリオがささやいてきた。
「ええ、そうね。じゃあ、わたしが提案したいこともあなたの想定内よね?」
「ダメダメ。きみ一人で四人を相手にするわけ?そんなおいしいこと、きみ一人にさせたくないよ」
「ちょっと待ってよ。わたしに出来ないって言いたいわけ?マリオ、あなたはまだ完治していないのよ」
「多少動いても大丈夫さ。あの連中が相手だったらね。それよりも聖女様に他人を傷つけさせたり、ましてや殺させたりなんてこと、おれとしてはさせたくないな」
彼がわたしを茶化しているのかと思った。だから、彼を思いっきりにらみつけてしまった。
意外にも、彼は生真面目な表情でわたしを見ている。
その視線に、なぜか心臓が飛び跳ねてしまった。
「やめてちょうだい。これは人助けよ。そもそも、聖女は人間や土地、国を護る為に存在するの」
『その為なら、襲撃者たちを傷つけたり殺したりしてもいいというわけ?』
マリオにそう返されたらどうしよう・・・・・・。
焦燥感に苛まれつつも、そんな偽善の言葉を並べ立てていた。
「そうだなぁ……。とりあえず、いまは状況がまったくわからない。つまり、馬車の中にいるのが何者で、どういう理由で襲われているのか、がね。もしかしたら馬車内の人物は悪人で、困りきっているだれかが暗殺者を雇ったのかもしれないし」
たしかにそうだけど、そもそも悪人に苦しめられている人が暗殺者を雇うことはあまりないと思う。
「だから、追い払うだけにしよう」
マリオは、そう提案すると屈んで石礫をいくつか拾った。
湖の畔で行われている戦いの場に向かって馬で駆け始めた。
そうこうしている間に、騎士っぽい二人が追い詰められている。
彼らは馬車を守るようにその前に馬を立てているけれど、その四方を暗殺者たちが取り囲んでじりじりと間合いを詰めていっている。
馬蹄の響きに、全員がこちらをふり返った。その瞬間、暗殺者たちの一人の顔面に石礫があたった。しかも、左の瞳にである。
「ギャッ!」
その予期せぬ攻撃に、暗殺者は尻尾を踏まれた猫のような悲鳴を上げた。
ほかの暗殺者たちが、体ごとこちらに向き直った。
その暗殺者たちの顔面に、石礫が飛んで来て見事に当たる。
二人目からは、暗殺者らしく声を発しなかった。だけど、かれらはあきらかに怯んだ。
その瞬間を見逃すはずはない。
馬から飛び降りるなり、軍用ナイフで一番近くにいる一人の腕を斬り裂いた。さらに手首を返しながらもう一人までの距離を詰め、その暗殺者のナイフを握る手首を斬り裂いた。
最後の一人は、無事な方の騎士が剣で斬りつけた。斬りつけられた暗殺者は、すんでのところで体を開いて剣をかわそうとした。しかし、剣先が肩から腹部をかすった。
大剣であるし、馬上から斬り下ろされている。剣先がかすっただけでも、そのダメージは大きい。
暗殺者の黒いシャツが斬り裂かれ、ついでに皮膚と肉をも斬り裂かれた。
空中に血が飛び散り、周囲の砂を赤く染め上げる。
気がつけば、その最後の一人以外の姿が消えていた。
最後の一人は、血をまき散らしつつ砂浜に倒れた。
腕はイマイチでも、そこはさすがに暗殺者である。
彼らの逃げっぷりは素晴らしいようだ。
暗殺の腕以上に……。
「さっきの連中は、あなたほどじゃないけど暗殺を生業にしているのは確かよね。そんな暗殺者四名が襲おうとしているなんて、狙われているのは何者かしらね?」
「おいおい。つぎはおれを持ち上げるのかい?ってか、きみはほんとうに不思議な女性だよな。連中を暗殺者と見破るなんて。そういう感覚も、聖女の力なのかい?」
彼は、聖女にそんな力などないとわかっていて尋ねてきた。
「聖女の力じゃないわよ。だけど、なんとなくわかるの。ほら、女の直感というのかしら?」
「恐れ入ったな。まぁそこはいいとして、どうする?」
「どんな人が狙われているのか知りたくない?」
「わかった、わかったよ。きみの好奇心にのろうじゃないか。行ってみよう」
彼はそんなことを言いながら馬たちを連れに行き、暗殺者たちのあとを追った。
アヤとわたし、それからマリオがあらたな人生をスタートするきっかけに出会っただなんて、まさかこのときには思いもよらなかった。
暗殺者たちが襲っているのは、一台の二頭立ての馬車である。二名の乗馬服姿の従者が騎馬で従っている。
一見したら従者に見えるその二名は、おそらく騎士にちがいない。
襲撃者たちに大剣で立ち向かっている。
暗殺者たちはさすがである。まず馭者を襲った。これで彼らのターゲットであろう人物は、すぐには逃げられなくなったわけである。
馭者だけでなく、騎士っぽい二人の内の一人も傷を負っている様である。
わたしたちが身を潜めている林の中の茂みからでも、彼の左肩が真っ赤に染まっていることがわかる。
「これは、想定内の展開だな」
マリオがささやいてきた。
「ええ、そうね。じゃあ、わたしが提案したいこともあなたの想定内よね?」
「ダメダメ。きみ一人で四人を相手にするわけ?そんなおいしいこと、きみ一人にさせたくないよ」
「ちょっと待ってよ。わたしに出来ないって言いたいわけ?マリオ、あなたはまだ完治していないのよ」
「多少動いても大丈夫さ。あの連中が相手だったらね。それよりも聖女様に他人を傷つけさせたり、ましてや殺させたりなんてこと、おれとしてはさせたくないな」
彼がわたしを茶化しているのかと思った。だから、彼を思いっきりにらみつけてしまった。
意外にも、彼は生真面目な表情でわたしを見ている。
その視線に、なぜか心臓が飛び跳ねてしまった。
「やめてちょうだい。これは人助けよ。そもそも、聖女は人間や土地、国を護る為に存在するの」
『その為なら、襲撃者たちを傷つけたり殺したりしてもいいというわけ?』
マリオにそう返されたらどうしよう・・・・・・。
焦燥感に苛まれつつも、そんな偽善の言葉を並べ立てていた。
「そうだなぁ……。とりあえず、いまは状況がまったくわからない。つまり、馬車の中にいるのが何者で、どういう理由で襲われているのか、がね。もしかしたら馬車内の人物は悪人で、困りきっているだれかが暗殺者を雇ったのかもしれないし」
たしかにそうだけど、そもそも悪人に苦しめられている人が暗殺者を雇うことはあまりないと思う。
「だから、追い払うだけにしよう」
マリオは、そう提案すると屈んで石礫をいくつか拾った。
湖の畔で行われている戦いの場に向かって馬で駆け始めた。
そうこうしている間に、騎士っぽい二人が追い詰められている。
彼らは馬車を守るようにその前に馬を立てているけれど、その四方を暗殺者たちが取り囲んでじりじりと間合いを詰めていっている。
馬蹄の響きに、全員がこちらをふり返った。その瞬間、暗殺者たちの一人の顔面に石礫があたった。しかも、左の瞳にである。
「ギャッ!」
その予期せぬ攻撃に、暗殺者は尻尾を踏まれた猫のような悲鳴を上げた。
ほかの暗殺者たちが、体ごとこちらに向き直った。
その暗殺者たちの顔面に、石礫が飛んで来て見事に当たる。
二人目からは、暗殺者らしく声を発しなかった。だけど、かれらはあきらかに怯んだ。
その瞬間を見逃すはずはない。
馬から飛び降りるなり、軍用ナイフで一番近くにいる一人の腕を斬り裂いた。さらに手首を返しながらもう一人までの距離を詰め、その暗殺者のナイフを握る手首を斬り裂いた。
最後の一人は、無事な方の騎士が剣で斬りつけた。斬りつけられた暗殺者は、すんでのところで体を開いて剣をかわそうとした。しかし、剣先が肩から腹部をかすった。
大剣であるし、馬上から斬り下ろされている。剣先がかすっただけでも、そのダメージは大きい。
暗殺者の黒いシャツが斬り裂かれ、ついでに皮膚と肉をも斬り裂かれた。
空中に血が飛び散り、周囲の砂を赤く染め上げる。
気がつけば、その最後の一人以外の姿が消えていた。
最後の一人は、血をまき散らしつつ砂浜に倒れた。
腕はイマイチでも、そこはさすがに暗殺者である。
彼らの逃げっぷりは素晴らしいようだ。
暗殺の腕以上に……。