聖女といえど六度の死亡エンドはうんざり。だから七回目は生き残った上で人生も恋も謳歌する予定です。追伸 暗殺者を憑依させましたので関係者はそのつもりでいて下さい
カリーナ・ガリアーニ
その彼に、「そもそも自分が処刑されたのはアヤの暗殺を断ったからだと思う」と告げた。
「マリオ、あなたは正解よ。わたしもあなた同様、うまくやりすごせばよかった。だったら、あなたに狙われず、処刑されることもなかったのかもしれない」
しばしの沈黙に身を委ねた。
その間に、彼は石床上に置いてある葡萄酒の瓶を持ち上げ、いっきにあおった。
「わたしにもちょうだい」
そして彼から瓶を受け取ると、同じようにいっきにあおった。
そうしたい気分だったからである。
「黒幕はだれかな?」
「さあ。いまとなってはわからないわね。候補者は何人かいるけれど」
彼が尋ねたのは、わたしたちにアヤの暗殺を依頼し、断ったわたしを罠にかけて処刑に導いた黒幕のことである。
「いまさらなんだけど、謝っておくわ。ごめんなさい」
ぶっきらぼうになってしまったかもしれない。
とりあえず、彼に謝りたかった。
彼の頬を傷つけてしまったことを、である。
「ごめんなさいって、なんのこと?」
「決まっているわ。あなたの左頬よ。婿入り前の美形に傷をつけちゃったってこと」
一瞬、彼のワイルドな美形がキョトンとした表情になった。
「なんだって?ほんとうにいまさら、だね。それに、頬より腹の傷の方がひどいと思うけど」
彼は、呆れたように笑いだした。
「一応、謝っておきたかったの。あなたのことを思い出してからずっとね」
「きみはマジメだな。前に言っただろう?おれの腕がきみにおよばなかっただけのこと。だから、おれ自身が悪い。何も気にする必要はないさ。おたがい、死力を尽くしての結果だから。それよりも、謝罪するのはおれの方さ。きみを助けられなかった。気にはなっていたんだ。おれに勇気があれば、きみのように見えざる不安に打ち勝つことが出来たのなら、きみを助けられたかもしれない。すくなくとも、理不尽な策略から逃れられたかもしれなかった」
やさしいマリオはそう言ってくれたけど、彼が言ったようなことにならないのは、わたしも彼自身もわかっている。
わたしの処刑は免れなかった。わたしは、殺されねばならなかった。
それがマリオ自身の手によるものではなく、処刑という形だっただけである。
「あなたも人のことは言えないわよ。そんなことを気に病んでくれて、マジメ以外にないわ。でも、ありがとう。それだったら、おたがいに過去は気にしないってことにしましょうよ。それよりも、これから先の方が大切だから。あなたにとってもアヤにとってもわたしにとってもね」
「わかった。同意するよ」
彼が右腕をつかんできた。
「さっき、婿入り前のって言ったよね?過去は気にしないって言ったばかりだけど、もしもきみがこの頬の傷に責任を感じているのだとしたら、責任を取ってくれるかい?」
「な、なんなのそれ?」
彼の言う意味がわからず苦笑した瞬間、彼に腕をひっぱられてしまった。
そして、抱きしめられていた。
「簡単なことさ。おれがだれかの婿になれないのだったら、きみがおれを婿にしてくれたらいい。それだったらきみはぼくにたいしてすまなく思う必要はないし、おれも婿になれる。どうだい、いいアイデアだろう?」
右耳に、そうささやいてきた。
「バカなこと言わないで。そもそも、あなたはアヤの方が好みなんでしょう?外見はアヤだけど、結局、アヤじゃないのよ。カリーナ・ガリアーニなの」
彼の胸元から彼の顔を見上げ、辛辣に返してやった。
「マリオ、あなたは正解よ。わたしもあなた同様、うまくやりすごせばよかった。だったら、あなたに狙われず、処刑されることもなかったのかもしれない」
しばしの沈黙に身を委ねた。
その間に、彼は石床上に置いてある葡萄酒の瓶を持ち上げ、いっきにあおった。
「わたしにもちょうだい」
そして彼から瓶を受け取ると、同じようにいっきにあおった。
そうしたい気分だったからである。
「黒幕はだれかな?」
「さあ。いまとなってはわからないわね。候補者は何人かいるけれど」
彼が尋ねたのは、わたしたちにアヤの暗殺を依頼し、断ったわたしを罠にかけて処刑に導いた黒幕のことである。
「いまさらなんだけど、謝っておくわ。ごめんなさい」
ぶっきらぼうになってしまったかもしれない。
とりあえず、彼に謝りたかった。
彼の頬を傷つけてしまったことを、である。
「ごめんなさいって、なんのこと?」
「決まっているわ。あなたの左頬よ。婿入り前の美形に傷をつけちゃったってこと」
一瞬、彼のワイルドな美形がキョトンとした表情になった。
「なんだって?ほんとうにいまさら、だね。それに、頬より腹の傷の方がひどいと思うけど」
彼は、呆れたように笑いだした。
「一応、謝っておきたかったの。あなたのことを思い出してからずっとね」
「きみはマジメだな。前に言っただろう?おれの腕がきみにおよばなかっただけのこと。だから、おれ自身が悪い。何も気にする必要はないさ。おたがい、死力を尽くしての結果だから。それよりも、謝罪するのはおれの方さ。きみを助けられなかった。気にはなっていたんだ。おれに勇気があれば、きみのように見えざる不安に打ち勝つことが出来たのなら、きみを助けられたかもしれない。すくなくとも、理不尽な策略から逃れられたかもしれなかった」
やさしいマリオはそう言ってくれたけど、彼が言ったようなことにならないのは、わたしも彼自身もわかっている。
わたしの処刑は免れなかった。わたしは、殺されねばならなかった。
それがマリオ自身の手によるものではなく、処刑という形だっただけである。
「あなたも人のことは言えないわよ。そんなことを気に病んでくれて、マジメ以外にないわ。でも、ありがとう。それだったら、おたがいに過去は気にしないってことにしましょうよ。それよりも、これから先の方が大切だから。あなたにとってもアヤにとってもわたしにとってもね」
「わかった。同意するよ」
彼が右腕をつかんできた。
「さっき、婿入り前のって言ったよね?過去は気にしないって言ったばかりだけど、もしもきみがこの頬の傷に責任を感じているのだとしたら、責任を取ってくれるかい?」
「な、なんなのそれ?」
彼の言う意味がわからず苦笑した瞬間、彼に腕をひっぱられてしまった。
そして、抱きしめられていた。
「簡単なことさ。おれがだれかの婿になれないのだったら、きみがおれを婿にしてくれたらいい。それだったらきみはぼくにたいしてすまなく思う必要はないし、おれも婿になれる。どうだい、いいアイデアだろう?」
右耳に、そうささやいてきた。
「バカなこと言わないで。そもそも、あなたはアヤの方が好みなんでしょう?外見はアヤだけど、結局、アヤじゃないのよ。カリーナ・ガリアーニなの」
彼の胸元から彼の顔を見上げ、辛辣に返してやった。