捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
父の懸念
近衛騎士団副団長の執務室で。目の前のお父様は、今までに見たことがないほど目を見開いている。
そんなに驚くほどの事を言ったつもりはないんだけどなあ…。
「ミリィ……今、なんと言った?」
「ですから、アスター殿下からこのメダリオンをいただいたので……お返しをしなくてはならないんですよね?ですから、お父様に相談しに来たのです」
仕立て屋のデザイナーさんからそう言われたんだし、ピッツァさんも意味深なことを言ってた。なら、きちんとお礼をしなくてはいけないってことだよね?
お父様は額に手を当てて、そのままドサッと椅子に座り込む。それから、長く深いため息をつかれた。
「なんてことだ……レスター殿下の次は、アスター殿下とは……」
「お父様、レスター殿下は関係ありません。今、わたしはアスター殿下にお返しを……」
だから、なぜレスター王子の名前が出るのか。わたしにとってもすでに過去のこと。まったく無関係なのに、皆やたらと不愉快なその名前を出したがる。
「……おまえは、意味がわかってるのか?」
「意味、とはなんですか?贈り物のお返し以上に何かあるのですか?」
まだるっこしい言い方は嫌いだ。はっきり言って欲しいわたしは、ストレートにお父様に訪ねた。
「このメダリオンは、将来を約束する意味がある。おまえは、アスター殿下と約束をしたのか?」
「将来……?ああ」
お父様のおっしゃる意味が、ようやくわかった。