捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
お昼ごはんを過ぎた時間帯だから、アスター王子はアフタヌーンティーの準備をしてくれていた。
レッドフィールドは文字通り赤レンガで建てられた洋館。もともとはソニア妃の所有物だったらしいから、今はご子息のアスター王子が管理されてる。
タウンハウスとは言っても、わたしの実家とそう変わらない規模の3階建て。瀟洒なデザインが周囲の緑豊かな景観と相まって、気後れするくらいオシャレな雰囲気だ。
池や東屋まである広い庭園は、四季折々の草花が楽しめるらしい。そんな贅沢な空間で、椅子とテーブルを出してティータイムを楽しんだ。
「見事なお庭ですわね」
「ありがとうございます。母がガーデニング好きなので、今も絶やさないようにしてます」
ぎょっとした。アスター王子がごく自然に、わたしのお母様に御母上様の話をされたから。
思わず2人の顔を見比べると、アスター王子はごく普通に微笑んでるし、お母様も特には動揺してない様子。さすがに大人だ…。
「ソニア妃殿下ですわね。わたくしの母もノプット出身ですから、勝手ながら身近に感じておりましたの」
そうおっしゃったお母様は、侍女に持たせたトレーの上の布袋をテーブルの上に置く。
「……これは?」
「微力ながらお手伝いできないかと思い、ノプットから取り寄せた蜜薬です。ノプット出身なら、子どもの頃に一度は口にしたはず。ソニア妃殿下のお役に立てば幸いですわ」