捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「……ありがとうございます」
アスター王子はお礼を言って受け取った。お母様の気遣いは嬉しいけど、やっぱりダメなのかな?と思ってしまう。ソニア妃にはなんの薬も効かなかったのだから。
「……美味しいわ。キャンディね」
お母様は銘柄をおっしゃったけど、わたしに紅茶の銘柄はわからない……。
香りを楽しみながらはちみつを入れ、さらにマシュマロを浮かべるとお母様から叱られた。
「ミリィ、みっともないからやめなさい」
「いいんですよ、マリアンヌ夫人。ここに来た時くらい、ゆったり好きなように寛いでください。ミリィも好きにすればいい」
「あ、ありがとう…ございます?」
なんか、アスター王子の笑顔がいつもより優しいというか、甘い気がする。なんだろう?
慣れないワンピース姿で落ち着かないのに、アスター王子の笑顔はなんだかそわそわさせる。
「……アスター殿下」
そのやり取りを見たお母様はティーカップをソーサーに戻し、真剣な面持ちでアスター王子に問いかけた。
「娘のミリュエールにメダリオンを贈られた……そのお気持ちは本物ですか?もし、一時的なものでしたら……残念ですが、わたくしはミリュエールをよそに預けねばなりません。レスター殿下で傷ついた娘を、これ以上醜聞に巻き込みたくはありませんの」