捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「まぁ、綺麗な布地ねえ」
お母様が仮縫いされたドレスを見て、うっとりされている。やっぱり美しいんだ……よね?生地は。
デザイナーのアンジェラさんがデザインしたのは、裾があまり広がらないAラインのドレス。ノースリーブの衿元にはメダリオンが目立つ装飾がなされてた。
「やっぱりこのラインが一番美しく見えますわ。あと、腰回りをもう少しボリュームを持たせましょうか?」
まち針をくわえながら器用にあれこれ修正していく手際の良さは、さすがにプロだと感心する。動かない着せ替え人形と化したわたしには、酷な時間ですがね!
「せっかくですから、お嬢様のトルソーの準備も、ぜひ当店にさせていただきませんか?」
アンジェラさんがお母様と和気あいあいと話されてる最中、何やらちゃっかり営業してる。……トルソーって、なに?
「そうですわね……アスター殿下がお相手でしたら、恥ずかしくないお支度をしなければなりませんものね。ぜひ、お願いできるかしら?」
あれ、お母様あっさりお願いされましたけど……アスター王子がお相手で、支度?
あ、もしかしたら騎士叙任式の相談!?
何年か先だろうけど、楽しみだなあ。わくわくする。
「お母様、式典の相談ですか?何年先かわかりませんけど、わたしも楽しみです。早く式を行えるよう、頑張りますね!」
「あら、ミリュエール様も乗り気でいらっしゃるのですね。では、ぜひとも式のドレスもわたくしどもにお任せください。一世一代の仕事をして見せますわ!」
騎士叙任式にドレス…?いるのかな??
わからないけど「お願いしますね」と頼んでおいた。