捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
夜、アスター王子は正餐よりもカジュアルな夕食会を催した。わたしとお父様お母様の他にはアンジェラさんとピッツァさんも招待されてる。
「相変わらず見事な料理だな」
「調度類も食器もオシャレですわ」
ピッツァさんは料理を、アンジェラさんは食器を褒め称え、それぞれ騎士とデザイナーらしいと忍び笑いをする。
実際、こういった場が苦手なわたしもリラックスして楽しむことが出来た。ワンピースにコルセットは要らなかったし、マナーもそううるさくないからありがたい。ただ、お母様には眉をひそめられたけれど。
「もはや家族のようなものですから、リラックスして楽しんでくださいね」
「……そうですな」
満面の笑みのアスター王子とは対照的に、お父様は失礼にならない程度に渋い顔をしていた。なぜだろう?
一応、近衛騎士団ではアスター王子は副団長のお父様の部下になるけど。今はそんなこと関係なく和気あいあいとしてくださればな。
夕食会の後はサロンに移動し、飲み物を飲みながら好きに歓談する。その頃には動きたくて仕方ないわたしは、体がうずうずしてきた。
(あー庭で見た鍛錬場、素晴らしかったな。早く鍛錬したいよ!よし、スキを見て抜け出そう)
「ミリィ、早く訓練したくて仕方ないって顔してる」
アスター王子にはすぐに見抜かれて、クスッと笑われる。バレたか、と軽く舌を出した。