捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?


「えいっ……うわわっ!?」

アスター王子に向けてダッシュした時、足元がぐらついて思わずよろけた。なんとか踏ん張ったけど、やっぱりまっすぐ進むのは難しい。

「ほら、どうした?実戦で足元が不安定な状況はままある。そんな様ではすぐにやられるぞ!」
「くっ!」

アスター王子の木剣がこちらを狙い、すんでのところでかわす。それでも体勢がすぐには整わず、バランスを取るだけでも大変だ。

砂利のある斜面の岩場。アスター王子のタウンハウスであえて一番難しい鍛錬場を選んだのは、自分の弱点を知りたいから。

「やぁっ!」
「まだまだだ!」

わたしの突きなんて、アスター王子は目をつぶってもかわせる。それでも諦めず、何度でも挑戦する。

(足を取られる……足腰が弱い!もっと鍛えないと)

わたしは度々バランスを崩すのに、さすがアスター王子は平然としてる。舗装された平坦な道を歩くように、わたしの攻撃をかわしこちらを攻撃してくる。

「うっ!」

パシン、と木剣で肩を叩かれ、今夜の鍛錬は終了。


「前から感じていたが、やはり足腰が弱い。もっと踏ん張れるよう、持久力を鍛えるためにも下半身を強化しろ」
「はい。ありがとうございました!」

ペコリ、とアスター王子に頭を下げる。
やっぱりアスター王子も見抜いていた……わたしの弱点を。

(なんだかんだ言って、アスター王子はちゃんとわたしを見ててくれるんだよね……)

胸があたたかくなって、少し頬が緩んだ。


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