捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

せっかく蒸し風呂に入ったけど、やっぱりじっとしていられなくて、木剣を手に打ち込みを始めた。

(早く、強くなりたい!1日でも早く従騎士に……そして、騎士に!)

正直な話、フランクスやトムソンが従騎士になったのは羨ましい。彼らは少なくとも7歳から小姓として修行してきたから、当たり前と言えば当たり前だけど。
年下に先を越された悔しさも、ほんの少しあった。

「はっ!とおっ!やあっ!!」

汗だくで木剣が滑り落ちそうになる。それでも汗を拭い、柄を握り直して構える。

「動きすぎると、翌日までダメージが残るぞ?」

ジャリ、と砂利を踏む足音が響いて現れたのは、鍛錬服姿のお父様だった。

「お父様……わかってます。でも、どうしても動きたくてたまらないんです。自分の弱さがわかってるので……早く強くなりたい」
「気持ちはよくわかる。私も騎士になる前は焦ったものだ。だが、何事も過ぎたるは及ばざるが如し……ムリをして体を壊しては元も子もない。自分の体力や持久力を把握し、適切な鍛錬をすることも、一流の騎士には必要なスキルだぞ」
「……はい」
「それに、おまえたちの世代は体が成長している。そのうち手足も伸びバランスも微妙に変わってくる。それに合わせた剣の扱い方や戦い方も変わってくる。だから、焦るな。時間をかけて己の戦い方を身に着けなさい」

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