捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「わかりました……でも、お父様にはランスの扱い方を教わりたかったんです」

わたしがそう言いながらランスを持ち上げると、お父様は苦笑いをされつつ嬉しそうに見えた。

「……まったく、おまえは。エストアール家の人間らしく、生粋の武人なのだな。よろしい、まずはランスを構えて見せなさい」

お父様の言葉通りに自分なりに構えてみると、いきなりダメ出しされた。

「軽く握りすぎだ。もっとしっかり根元で握る。力まかせに突くのではなく、体重を乗せて突くんだ。突く時に体重は前にかけるな。体が動かしにくくなり、反撃を受けたり落馬しやすくなる」
「はい!はっ!!」
「反動で落馬を防ぐため、ランスレストを活用し馬の鞍も後ろを高くしておけ。攻撃前はランスを左下斜めに構え、相手のランスを跳ね上げてからまっすぐに向けて突くんだ」

さすがにお父様は馬上槍試合で勝率が高いだけあり、実戦に沿ったアドバイスをしてくださる。初めて練習をした時に、ランスが当たらなかったり落馬した理由がはっきりわかった。力まかせにランスを突き、しかも体重を乗せすぎたせいだ。

なんだかんだ言って、お父様も優しい。娘のわがままを聞いて、夜遅くまで鍛錬に付き合ってくださった。朝早くでなければいけないのに。

そして疲労困憊のわたしはふらふらと部屋に戻ると、そのまま倒れ込むようにベッドに横になり、何も考えないまま寝落ちした。

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