捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「わたしは……アスター王子とともにいる。だから……あなたと行かない!!」
パリーン、と澄んだ音が響いた。ガラスが砕け散り、それが雨のようにキラキラ光りながら降り注ぐ。
しゃらん、しゃらん、しゃらん……。
光のなか、ガラスのベルの音が聞こえてすぐに現れたのが、ユニコーンだった。
“ミリュエール”
「……ユニコーン……」
“すまなかった。あやつの“こころ”がわたしを支配してしまっていた”
「“こころ”……?」
わたしが呟くと、ユニコーンは項垂れるように頭を下げた。
“そなたらはわたしを助けてくれた。恩には報いねばならぬ……だが、今すぐは難しい。あやつは最近わたしを乗っ取る時間が増えた”
「どういうこと……?乗っ取るって」
“わたしは絶命する際、とっさにあやつの命を使って生き延びた。その弊害で人としての“こころ”がわたしの中に入り込んでしまったのた。時を経るにつれ、あやつのこころも成長していった……だから……”
“だから、ぼくは母様もミリュエールもほしくなったんだ”
ユニコーンの姿が突然男性に変じると、その人はニコニコと両手を広げた。
“ミリュエール、きっと君を夢の国に招待するよ。楽しみにしててね”
その声を最後に、わたしの意識が霧の中に消えた。