捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
国王陛下主催の狩猟会が始まった。
国王陛下は広大な所有地をお持ちで、そのうち狩猟専用の土地を定められている。
狩りはただ野に育つ獲物を仕留めるだけでなく、狩りのために育てられ管理された動物たちも放たれる。
森林には専用の番人も常駐し、狩猟のために森を維持管理する。快適に狩猟できるよう適切な地形になるよう整え、獲物を狙って侵入する密猟者とも戦う。
そりゃあそうだ。ただ狩りをするなら適当な山や森でやればいいけど、王侯貴族が楽しみでやるイベントなんだから、なるべく危険がないよう整えるんだろうな。
わたしとしては、何があるかわからない自然そのままで狩りをしてみたいけど。
とはいえ、いくら人の手で管理されてはいても、やはり自然相手。不慮の事態なんていくらでも発生するし、獲物の鹿や野生の生物が襲って来ないとは限らない。そのため、近衛騎士を始めとする騎士たちも護衛等で動員された。
「はあーいいなぁ。おれも鹿を狩ってみたい…」
「ふん、おまえみたいなヘロヘロの弓では当たるどころか届かないのがオチだ」
「なんだと!」
フランクスの憧れ志向とトムソンの毒舌は相変わらず相性が最悪なようで、いつもどおりケンカを始めてる。平和だなあ……。
「トムソン、無駄口叩かずしっかり見てなさい」
「は、はい!」
仕えるお父様に注意されたトムソンは、慌てて姿勢を正すと、しっかり前方注意体制に入った。