捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
狩猟が始まった初日。
副団長のお父様が指揮する大隊の一つに、アスター王子が副隊長として編成された。
狩猟地は広大な面積なだけあり、フェニックス騎士団やワイバーン騎士団等の騎士も動員されてる。
国王陛下や王族は近衛騎士団団長を始めとする精鋭部隊が護っており、お父様の大隊は公爵等の大貴族を護衛する。
獲物を追い立てる勢子(せこ)の声があちこちから聞こえ、活気がある雰囲気にわたしも思わずうずうずしてしまう。
「はは、ミリィも参加したいって顔をしてる」
「そりゃあね」
フランクスに声をかけられると、ペロッと舌を出した。
わたしたちはそれぞれプレートアーマーでフル装備し馬に騎乗した上司の傍らに控えてる。武器や荷物を運搬し、戦いになったらその補助をする。
お父様、アスター王子、フランクスの上司のカインさん。他数名で、やや小高い丘から全体の様子を眺めてた。
「どうやら順調のようですね」
面頬(めんぼお・兜の顔を隠す部分)を上げたカインさんがほっとしたように言うと、お父様も頷いた。
「そうだな。今のところ特に問題は無さそうだ……そろそろ次の予定地へ移動しよう」
お父様がそうおっしゃったから、騎士達は馬を動かし丘から下ろうとする。
けれどもアスター王子だけは愛馬を動かさないまま、お父様に進言した。
「お待ちください。なにやら様子がおかしくはありませんか?」