捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
アクアは抜群の跳躍力を利用して、僅かな突起を足場にしながら下へ降りていく。
その間にも伝令の鷹が舞い上がり、甲高い声で鳴きながら一定の動きをして、他の部隊へ状況を伝えていた。
“襲撃者アリ。ポイント2-3ヘイソゲ”
先行したアスター王子の後を追いつつ、最大限の注意を払い周囲の様子を窺う。
「きゃあっ!」
「悲鳴が…アクア、あちらへ!」
森の中で若い女性の悲鳴が聞こえ、すぐにアクアを方向転換させてそちらへ急ぐ。すると、軽装のまだ若い女性が森の中を走っていたけど、そのすぐそばの木に飛来した矢じりが突き刺さった。
「暗殺者!」
アスター王子が発した言葉が現実になり、危機感が増して気が焦りかけた。今のところ女性は矢をすんでのところで交わしているけど。
「一か八か……」
一度止まって念のため持参した小さな盾を腕に装着し、すぐにアクアを走らせて女性に接近する。無我夢中で走っているようで、だいぶ息が上がってる。
「あっ、た、助け……きゃあっ!」
女性がこちらへ気付いて助けを求めた瞬間、足元に生えていた木の根に足を取られ、そのまま前のめりに転倒した。
考える間も、なかった。
すぐにアクアから飛び降りると、今まで飛来した矢の角度から予測した次の攻撃に備える。女性を庇うような形でしゃがみ込み、盾を構えてさぁこい!と意気込んだ。
「!!」
ヒュン、と空気を割く鋭い音が聞こえた。
(ここだ!)
予測から僅かなズレがあったけど、無事に盾で矢を防げた。