捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
矢をつがえるには、ある程度時間がかかる。
「乗ってください!」
2射目もなんとか防いだわたしは、アクアを伏せさせて女性へ乗るよう促す。どうやら乗馬経験があるらしい女性は素早くアクアの背に乗り、続けてわたしも跳び乗った。
「はあっ!」
最初から全速力でアクアを駆けさせ、森を抜ける最短ルートを目指す。時折弓矢の攻撃はあったものの、ギリギリかわしつつ、やがて他の部隊と合流し無事に森を脱出する事ができた。
「お父様!」
「ソフィア…無事でよかった!」
森を抜けた平原では女性が父親と無事に再会し、抱きしめあって喜んでらした……んん?ソフィア?
どこか聞き覚えがあるような……。
「ソフィア!」
やがて、簡易的なチェインメイルを身に着けた柔らかい黒髪ととび色の瞳を持った、20代半ばの男性が馬に乗って駆けつけていらっしゃった。アスター王子に似たその人こそ、アスターの異母兄であり、第一王子のアルベルト殿下でした。
アルベルト殿下は馬から降りると、すぐにソフィア様を抱きしめる。
「無事でよかった……ケガはないかい?」
「アルベルト殿下、はい。彼女のお陰で無事でしたわ」
艷やかな青い髪……ソフィア様。
(思い出した……!わたしの前にレスター王子の婚約者だった、ソフィア・フォン・セジュール公爵令嬢!!)
まさかまさかの展開に、背筋が伸びる気がした。