捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
ソフィア様がわたしのお陰だ、とお父上とアルベルト殿下に紹介され、さすがにわたしでも肝が冷える。
だってソフィア様がレスター殿下から婚約破棄された原因は、意図しなかったとはいえわたしだったのだから。
一応お父様をつうじて謝罪は受け入れていただけたのだけれども。公爵家と男爵家では直接会うことも難しい。直接謝罪ができてないから、気が引けるんだよね。
「ああ、君か」
ソフィア様によく似た青い髪を持った公爵様は、わたしを認めると歩み寄ってくる。馬上から降りて膝を着いたわたしに、予想外の穏やかな声をかけてくださった。
「よく、娘の命を助けてくれた。礼を言うよ」
「……騎士として、当然でございます」
「聞いているよ。女ながら甘えず騎士を目指す男爵令嬢がいる…と。なかなか頑張っているようだね」
よもや、公爵様からそんな優しいお言葉をいただけるなんて思いもよらなかった。
許されて顔を上げると、公爵様は優しい顔で頷いた。
「おそらくレスター殿下の事で気後れを感じるのだろうが、あれは殿下の気まぐれなわがままだと誰もが知ってるよ。現に君も婚約破棄されたのだし、謝罪はお父上を通じて受け入れた。だから、もう気に病むのはやめなさい」
なんて、心が広いお方なんだろう。あまりの優しいお言葉に、不覚にも涙が出そうになった。