捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「夢のエネルギー……」
アスター王子はなにか思い当たる事があるのか、そのまま考え込んでしまった。そんな彼を放っておき、わたしは食事の準備をする。
これから1週間野営するんだから、しっかり煮炊きできる竈を作るのは基本中の基本だ。そして、宿舎と違い食事の材料は自前か現地調達。
「さて、と」
森の中で採集した食材を革袋から出した瞬間、アスター王子に手を掴まれた。
「……おい、待て。なんだそれは?」
「え?食材ですけど…」
「どう見ても、イモムシや昆虫やカエルにしか見えないんだが…?」
「そうですけど?え、野営じゃ常識じゃないですか?貴重なタンパク源になりますよ。イモムシは直火焼きがとろりとして美味しいんです。カエルは鳥肉みたいであっさりしていていけますよ!」
「………」
「なんで顔が青くなるんですか?」
ゲコゲコ鳴いてぴょん、と革袋から一匹のカエルが飛び出すと、ギギッ……とアスター王子が固まった。
「待っていてください。美味しく料理をしてあげますからね」
わたしはカエルをわしづかみにすると、ナイフを持ったまま笑顔でそう言っておく。
そして、30分後。
「アスター王子、召し上がらないんですか?」
カエルとイモムシを串刺しにして焼いたのに、アスター王子は固まったまま動かない。
「美味しいのに……勿体ないですよ。明日もたくさん動かないといけないんですから、わがまま言わずにちゃんと食べてください!ほら!」
串刺しを口の中に突っ込んだ瞬間、アスター王子の断末魔のような叫びが野営地全体に響いた。