捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?


狩猟会の6日目。
さすがに狩り尽くした狩猟地から移動して、新しい森での狩猟となる。

急勾配もある山へ続く丘陵地だけあり、警備の難易度は格段に上がる。

「ミリィ、いいか。ここの渓谷には不逞の輩がうろうろしている。決して気を抜くな」
「はい!」

わたしはアクアの騎乗が認められ、アスター王子と併走できる。まだ持ち馬がないフランクスにはずるいっていわれたけどね。

わたしは支給されたチェンメイル姿で、木剣と真剣の短剣を腰のベルトに下げてる。このまま無事で狩猟会が終わればいい……と願っていたのだけれども。

明らかに貴族以外の狩猟者を見つけたのが、お昼の手前だった。

王族直轄の御料地で無断で密猟する人間は跡を絶たない。丸々と肥えた鹿や鳥やうさぎ等は、警戒心が薄くて狩りやすい上に味もよく高値で売れる。

「そこの者たち、なにをしている!」

パトロール中に鹿を木に吊るして血抜きをしているところを発見し、アスター王子が詰問すると密猟者は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「ミリィ、あちらを追え!」
「わかりました!ハッ!!」

正反対の方向に逃げられたら、バラけるしかない。わたしはアスター王子の指示で、まだ若い男性を追いかけ始めた。

< 149 / 181 >

この作品をシェア

pagetop