捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ミリィ、よくやったな。あの男の証言で大規模な密猟計画が発覚し事前に防ぐことができた」
6日目の夜、天幕前でアスター王子に褒められたけど…なんだか嬉しくなかった。
「どうした?手柄を立てたんだ。嬉しく無いのか?」
アスター王子にそう言われて、首を横に振る。それよりも、気になることを訊ねた。
「……あの男性は?どんな罪になりますか?」
「初犯だし、貧しさゆえの犯罪だ。知ってるすべてを素直に自供したのだし、無罪放免とはいかないが6ヶ月の重労働で許されるんだ。まだ寛大な方だろう」
「…………」
そうだろうか?
確かに、法に則ればまだ刑は軽い方だ。
昔は二度と密猟できないよう、腕を切る刑まであったらしい。それと比べたら確かにマシだけど。
「……人が人を罰する…なんの権利があってそうなるんでしょうね?」
貴族として、騎士を目指す者として、あり得ない発言だった。でも、言わずにいられなかった。
「本当は、誰のものでもないのに…区別して差が出てしまう。あの男性だって、毎日食べられれば密猟に参加することもなかった…」
自分が、恥ずかしかった。毎日毎日不自由なく食べられることが当たり前で。当たり前過ぎて……。当然のように感じてた。
(なにが、ひとを幸せにしたい…だ。こんな当たり前のことすら知らず、よく言えたものだよね)
わたしは、無力だった。ただひたすら無力感を感じ打ちひしがれた。