捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ミリィ」
アスター王子が傍らで膝を着き、わたしに語りかける。
「……オレ達は確かに無力だ。一人でできる事など、たかが知れてる。うぬぼれるな」
「わかってます!わかってる……でも、だからこそ悔しいんです」
ゴシゴシと腕で涙を拭い、キッと前を向いた。
「ぼくにできる事は、戦うことだけ。でも、まだそれすら満足にできない……だから」
わたしはアスター王子を睨むように見たあと、頭を深々と下げて頼み込んだ。
「アスター殿下、ぼくをもっと強くしてください!お願いします!!」
「……わかった。弱音を吐くなよ」
アスター王子からの確約が得られると、安堵して体中から力が抜けた。それでもやるべきことはするべきだ、と革袋から食材を出す。
「……おい、待て。なんだそれは?」
「え、セミとゲンゴロウとバッタですけど?今夜のごはんですよ」
「もはや肉ですらないじゃないか!」
「贅沢言わない。食わず嫌いはだめですよ!飢えてる人を考えて、食べられるだけマシと思ってください」
「そ、それはそうだが……ひっ!?」
「串焼きです。脚を取って召し上がってくださいね」
「…………」
わたしがぱくぱく口にしてると、アスター王子は信じられないものを見たような顔をする。
あー面倒くさい。
「ほら、食べてください!」
「わ、わかってる!わかってるから口に突っ込むな!」
「なら、きちんと残さす食べてくださいよ」
「………ぐぅ」
「あ、白目剥いた。美味しすぎたんですね。たくさん召し上がってください」
アスター王子の口に、虫の串焼きを五本ほど突っ込んでおいた。